本研究は、日本仏教とくに禅がグローバル化する過程を、東西の宗教・思想の相互交流・潮流の中で捉え直すプロジェクトである。具体的には19世紀末から20世紀半ばに宗教・思想の東西間対話を実践してきた世界会議を軸に、資料調査に基づく実証的分析を行う。その際、日本からの一方向的な輸出としてだけでなく、欧米の宗教的・霊的文化に基づく受容と齟齬のあり方や、同時代の他の東洋宗教が受容された過程も念頭に入れた幅広い射程から、19世紀末から20世紀へと日本の「禅」が “Zen” として欧米で普及していく歴史を明らかにする。鈴木大拙は本研究のキーパーソンであるが、彼にとどまらずスーフィズムや神智学など広く他の宗教・霊的運動などの同時代の動きとの関連で捉えることで、諸宗教との対話を通じて「禅」が “Zen” となったグローバル・ヒストリーを描いていく。
これにより、日本の近代仏教史を欧米の近代思想史に接続させ、「禅」が“Zen”となった過程を思想史や宗教史の観点から描く。宗教間対話を含め諸宗教が交錯するという視座であり、専門分化した宗教研究に新たな一石を投じようというものである。